タレントマネジメントの可能性
コロナ禍でひっそり退職も増える中、タレントマネジメントという言葉がよく聞かれるようになりました。
タレントマネジメントとはなんでしょうか?
従業員が持つ能力・資質・才能やスキル、経験値などの情報を人事管理の一部として一元管理することで、組織横断的に戦略的な人事配置や人材開発を行うものをさします。
住所、年齢、学歴、職務経歴などの基本的な情報に追加登録し活用することによって、企業は多大なメリットを享受することが可能となります。
そんなタレントマネジメントを導入することで、企業はどんなメリットを享受できるのでしょうか?
5つに大別して取り上げていきたいと思います。
人材育成への影響
会社の経営を行っていくためには、優秀な人材が必要です。
タレントマネジメントを導入することで、従業員の強み・弱みを適切にマネジメントする事が可能になります。
一人ひとりのデータを整えて行くことで、従業員個人に合った課題を可視化でき、直接アプローチできるからです。
経営目標に基づいた人材育成計画を立案・実践する事で、組織が求める従業員像と現状の差を埋められたら嬉しいですね。
私が中国に駐在していた際に、宋文洲さんの講演で「日本人は採用した際にミスマッチしていても、育て続ける文化だ」という話をしていました。
実際の言い方は、もっと激しいもので、「サラブレットを採用してたかったが、入社して見ていくと牛だった。中国では、その段階で解雇するか、牛のための仕事をあてがう。日本は牛も育てればサラブレットになると考えているかのような人材育成を行う。」
こんなニュアンスのお話でした。
『やっぱり変だよ日本の営業』という本を書いている、宋さんらしいお話ですね。
確かに、牛を馬にするのは無理だと思います。
でも、はたからみるとそんな人材育成をしているのが日本なのだそうです。
タレントマネジメントによって、その人の特性をしっかりと把握し、それぞれの得意なものをしっかり伸ばしてあげることで、成長も早まり、経営にも寄与していくということが期待できます。
適切な評価によるモチベーションの向上
離職理由のひとつに、「評価が偏っている。」「適切な評価を得られない」ということがきかれます。
タレントマネジメントを導入することで、従業員と組織の目標がリンクした目標設定ができ、結果最大限のパフォーマンス発揮に繋がります。
従来の部署単位の目標ではなく、より従業員のキャリアプランに沿った目標設定に見直していくことで、適正に合致したモチベーションを高める設定に繋がります。
適切な管理・評価の仕組みがないと、通年を通しての評価ではない、評価をするタイミングの直前におきた印象で評価をしてしまうことにつながります。
ハロー効果などといいますが、昔の日本の評価では査定の直前に数字を大きく上げた人が評価され、年間コンスタントに売上を上げている人が評価されないという現象もおきていました。
これでは、数字を維持して貢献しているメンバーは不満がたまりますね。
また、部門に寄った評価システムの場合、部門長の性格により大きな影響がでることもあります。
会社全体の売上が上がっているのに、上司が評価の渋い方のために、その部門だけ賞与がが低いということもでてきます。
そういった時期や評価者の特性による問題を、データ化して管理することで適切に評価し、モチベーションを維持、離職の回避と経営の向上につなげていくものです。
人材の最適配置による強い組織構築
人材データの蓄積と、その分析によって個人個人の適正の組み合わせを最善の形に整えていくことができます。
経営戦略や目標に対して、該当組織に不足する人材を配置していくことで、組織力の向上を目指します。
それを実行するためには、部門長から見た個人評価ではなく、会社に蓄積した人材データを元に客観的に判断し、配置していくことが望まれます。
また、その人材のキャリアプランにつながる配置を行うことで、モチベーション高く仕事に邁進してもらえることが期待できます。
私が前にいた会社では、5人しかいない営業拠点に、姥捨山ではありませんが定年間際の方ばかりを集めることが頻繁にありました。
地方拠点が主な該当部署なのですが、人数が少ない分、自律的に働けるベテランを配置しておきたい。
人数が少ないから、若手を指導して育てる余裕はないだろう。
そんな考えから、姥捨山が発生している状況です。
正直、定年まで3年くらいの人が集まっても、挑戦していく雰囲気は醸成しづらく、個人商店の集まりとなり、管理するにもベテランなりのフォームを崩すことはできず、拠点崩壊が起きがちでした。
やはり、一定レベルの年齢バランスやスキルバランスがあるからこそ、補い合い成長することがモチベーションの向上につながるものと思っています。
定期的な社内アンケートで現状把握
人は成長をしていくものですから、考え方や強み、弱みも変化していきます。
その変化に対応していくために、定期的な社内アンケートを行うことで人材情報をアップデートしていくことができます。
また、人材面だけではなく、会社の方針や経営、拠点の整備状況なども時代に合わせて変化していくべきことだと思います。
このコロナ禍で、在宅勤務や遠隔会議が大きく増えました。
その中で、変化に対応できる人材や、変化に手を打てる企業の差が大きくでていました。
そういった、経営がで「こうだろう」「よいだろう」を客観的に判断していく手段としてアンケートは有効で、年に1回など、定点観測を行っていくことでより具体的な施策を進めていく力になることが期待できます。
戦略的な採用と離職防止 = 経営資源の維持
最後に、タレントマネジメントが進むことで、自社に不足する人材や、マッチしやすい人材も判断ができるようになってきます。
また、モチベーションの向上につながる配置や評価が実践されていくことで、離職の防止にもつながっていきます。
対面でのコミュニケーション機会が減っているなら、なおのことお互いの思いや、志向を理解していくことが大事であり、それに寄与できるデータの蓄積は大きな力です。
コロナ禍で人とのコミュニケーションが薄れていく中、ひっそりと退職してしまう人が増えています。
それを抑止していく、様々な仕組みがタレントマネジメントには存在すると思います。
適宜行うアンケートで、一人ひとりの変化や会社の打ち手に対する満足度を把握し、キャリプランを理解した配置を行うことで前向きに業務に取り組める。
最適な組み合わせの拠点を作ることで経営が向上する。
様々なメリットが想定されます。
何より、今の採用は人材会社を経由して行うと年収の35%程度の紹介料が発生します。
その後、教育にコストを掛けてやっと独り立ちできる、、と思ったら、退職されてしまう。
この損失は非常に大きいです。
会社を維持し、経営レベルをあげて、成長を続けていくためには、安定して社員が残ること、前向きに働いてもらうことが大事です。
今まではCS向上といっていたのが、あわせてES向上となり、それに付随してエンゲージメントを上げるというようなキーワードが増えています。
優秀な営業は、いろいろな企業から声がかかります。
それでもその人を残すことができますか?
タレントマネジメントに期待されるのは、人を大事にそだて、組織力の向上につなげ、経営を長期的にプラスにしていくことだと思います。
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